ドント式とは、比例代表制の選挙などにおいて、得票数に応じて議席を配分する計算方法の1つです。
しかし、ドント式とはどんな計算方法なのか、なぜ採用されているのかなどがよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、ドント式の計算方法や使われる場面、よく間違われる他の計算方法との違いなどについてわかりやすく解説していきます。
目次
ドント式とは?キーワードは「選挙」と「配分」
まずは、ドント式とはどのような計算方法であり、どこで使われているのかを解説していきます。
「選挙」と「配分」という2つのキーワードを念頭に置くと、理解しやすいでしょう。
ドント式とは?
ドント式とは、選挙において、得票数に応じて議席数などを比例配分するために使われる計算方法です。
政党や・候補者など、各投票先の得票数を特定の数字で割っていく最大平均方式と呼ばれる方法に分類されます。
ベルギーの法学者であるヴィクトル・ドントが発案したことが、ドント式の名前の由来です。
ドント式が使われる選挙とは?
ドント式が使われる選挙としては、日本では国政選挙である衆議院議員選挙や参議院議員選挙の比例ブロックが挙げられます。
比例代表制の仕組みがそもそもよくわからない、という人は、以下の記事でわかりやすく解説しているのでそちらを参考にしてみてください。
比例代表制と選挙区制の違いをわかりやすく解説
また、自由民主党(自民党)や立憲民主党などの政党でも、総裁選挙・代表選挙と言った党のトップを決める選挙において、党員による投票をドント式で配分しています。
ドント式の計算方法は?例題でやり方を解説
続いて、ドント式での議席計算のやり方について、例題とともに見ていきましょう。
ドント式の計算方法
ドント式の計算のやり方は非常に簡単です。
各候補の得票数を1、2、3と順に整数で割っていき、その商の大きい順に定数に達するまで議席を配分していきます。
例えば、定数10の選挙で、A党が1,500票、B等が1,200票、C党が400票を獲得した場合で考えてみましょう。
結果としては、上記の画像のようにA党が5議席、B党が4議席、C党が1議席を獲得することになります。
この場合の計算過程を見ていきましょう。画像の内容で満足な方は、次の項で注意点に触れているので、そちらをご覧ください。
まず、各政党の得票数を1で割ると、A党は1,500、B党は1,200、C党は400となります。
この時点で最も大きい値はA党の1,500なので、A党に1議席目を割り振ります。
続いて、各政党の得票数を2で割ると、A党は750、B党は600、C党は200となります。
この時点で2番目に大きいのは、B党の得票数を1で割った1,200なのでB党に2議席目を割り振ります。続いて、3番目に大きい値もA党の得票数を2で割った750で確定しているため、A党に3議席目を分配します。
同じように各政党の得票数を3で割った場合、A党は500、B党は400、C党は133.33となります。
この時点で、4番目に大きいのは、B党の得票数を2で割った600なので、4議席目はB党に割り振ります。また、5番目に大きい商がA等の得票数を3で割った500であることも確定なので、5議席目をA党に割り振ります。
引き続き、各政党の得票数を4で割っていきます。商はそれぞれ、A党が375、B党は300、C党は100ですね。
この時点で、B党の得票数を3で割った商とC党の得票数を1で割った商が、どちらも400で6番目に大きい結果となります。そのため、6議席目と7議席目は、それぞれB党とC党に割り振りましょう。
続いて、各政党の得票数を5で割ります。商はそれぞれ、A党が300、B党は240、C党は80です。
この時点で、8番目に大きいのはA党の得票数を4で割った375なので、8議席目をA党に割り振ります。
また、次に大きい結果が、A党の得票数を5で割った商と、B党の得票数を4で割った商が300で同数ですね。そのため。9議席目と10議席目をA党とB党に割り振ります。
これで定数である10議席すべての割り振りが完了し、A党が5議席、B党が4議席、C党が1議席という結果になります。
ドント式はどこまで割る?
ドント式の計算過程において、どこまで割るべきなのかについては注意が必要です。
必要な回数の計算を繰り返さないと、結果が変わってしまう可能性があります。
上記の画像は、先程の例題と同じ条件下で、各政党の得票数を4で割る時点で止めてしまった場合との比較になります。
この場合、本来は5議席を獲得できるはずのA党は4議席、本来は1議席しか獲得できないはずのC党が2議席を獲得する結果になってしまいます。
この例では、5回まで計算を繰り返す必要があることがわかりますね。
ここで、本題のどこまで割るべきかについては、最後に議席を配分した際に使用した商の値が、他の政党(候補)の議席の配分対象にならなかった中で最も大きい商の値よりも大きくなるまで計算する、ということが重要になります。
例えば、今回の例題では、正しく計算した場合には、最後に議席の配分対象となったのが、A党の得票数を5で割った商である300でした。
B党とC党の計算結果で、議席配分の対象とならなかった値の中での最大値は、B党は得票数を5で割った商の240、C党は得票数を2で割った商の200であり、先程の300より小さいため、ここで計算を終えることができますね。
最後の1議席の計算結果が同数の場合
最後の1議席の計算結果が同数の場合、選挙長によるくじ引きで当選者が確定します。
そのため、得票数が同数である、という理由で当選者が増えたり減ったりすることはありません。
ドント式とサンラグ式・アダムズ方式の違い
選挙における計算方式として、ドント式と混同されることの多いサンラグ式・アダムズ方式との違いについても、合わせて抑えておきましょう。
ドント式とサンラグ式の違い
ドント式とサンラグ式は、どちらも特定の数で得票数を割っていき、その商の大きい順に議席を割り振る最高平均方式の1つです。
異なる点を表にまとめました。
名称 |
ドント式 |
サンラグ式 |
---|---|---|
計算方法 |
得票数を整数で割っていく |
得票数を奇数で割っていく |
結果の特徴 |
サンラグ式よりも大政党に有利 |
ドント式よりも小政党に有利 |
まず、計算方法については、ドント式ではそれぞれの得票数を1から順に整数で割っていましたが、サンラグ式では1から順に奇数で割っていきます。
この結果、サンラグ式ではドント式よりも小政党に有利になるとされています。
また、サンラグ式の小政党が有利になるという点を是正するために、修正サンラグ式という計算方法もあります。
修正サンラグ式では、得票数を1ではなく1.4から始めて、順に奇数で割っていきます。この結果、サンラグ式よりも大政党が有利で、ドント式よりも小政党が有利という結果になります。
ドント式とアダムズ方式の違い
アダムズ方式は、日本では選挙区割りに活用されている計算方法です。
各都道府県の人口を特定の数で割って、その計算結果を各都道府県の選挙区数としています。
このとき使用する特定の数は、全都道府県の計算結果の合計が総議席数になるように設定します。
詳細については、以下の記事にて計算例とともにわかりやすく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
アダムズ方式とは?計算方法やメリットデメリットをわかりやすく解説
また、アダムズ方式を選挙区割りに活用する理由には、1票の格差を解消するためというものがあります。
1票の格差については、以下の記事でわかりやすく解説しているので、こちらも合わせて読んでみると、より理解が深まりますよ。
1票の格差とは?問題点や解決策、広島への影響も解説
ドント式の計算は意外と簡単!要点を抑えて理解しよう!
議席を比例配分する、と聞くと少し難しそうに聞こえますが、実はドント式の計算方法はかなり簡単だったことがわかりましたね。
計算方法がわかれば、よくわからないまま決まっていた比例ブロックの選挙結果についても、理解が深まるはず。
ぜひこれを機会に、選挙に付いてアンテナを張ってみてくださいね。
もしも他にも何か知りたいことがあればぜひコメントをSNSやコンタクトフォームからお寄せください!
ドント式は、得票数に応じて議席やポイントを分配する計算方法です。 日本では、衆議院議員選挙や参議院議員選挙といった国政選挙の比例ブロックや、自民党や立憲民主党などの代表選挙における党員票の計算に使用されます。 ドント式の計算方法は、各候補の得票数を1から順に整数で割っていくというものです。 この商、つまり計算結果の大きい順に、定数に達するまで議席やポイントを分配していきます。 ドント式の計算はどこまで割るのかというと、もちろん結果が出るまでです。 具体的な基準としては、最後に議席を配分した際に使用した商の値が、他の政党(候補)の議席の配分対象にならなかった中で最も大きい商の値よりも大きくなるまで計算するということになります。 途中で計算を辞めると、分配数の結果が変わってしまうこともあるので注意が必要です。よくある質問
ドント式とはどこで使われる?
ドント式の計算方法は?
ドント式はどこまで割る?