国政選挙が終わるとともに、報道が過熱するのが1票の格差問題。あなたも最近よく目にするのではないでしょうか?
国政選挙で1票の格差があれば、その都度弁護士グループによる訴訟が行われていますね。その判決で、違憲状態という言葉が飛び出して、「違憲状態ってなんだ?」「違憲とか憲法違反と何が違うの?」と疑問を持った人も多いですよね。
そこでこの記事では、違憲状態とは何か、違憲判決との違いや裁判の流れ、広島にも関わる最新の情報をわかりやすく解説します。
最後まで読めば、あなたも時事問題に1つ詳しくなれること間違いなしです。国政選挙のたびに話題になるので、定期的に役立つ知識が身につきますよ!
目次
1票の格差が違憲状態とは?違憲との違いは?
違憲状態という言葉を、1票の格差問題についての裁判で耳にする人が多いですよね。
そこでまずは、1票の格差問題や違憲状態とは何かを解説していきます。
そもそも1票の格差とは?
まず、大前提として1票の格差問題についてです。1票の格差とは文字通り、選挙の投票で投じる1票の価値が人によって異なる状態を指します。
日本国憲法では以下のように、法の下の平等と普通選挙が規定されていて、選挙においても皆が平等に1票を投じられる平等選挙の原則があります。
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
日本国憲法第十四条一項 日本国憲法 | e-Gov法令検索
公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
日本国憲法第十五条三項 日本国憲法 | e-Gov法令検索
しかし、選挙区によって議員の定数や有権者人口が違うため、1議席当たりの有権者数の割合が異なるというのも事実です。これは言い換えれば、当選するために必要な得票数の違いであり、同じ1票でも選挙区によって価値が異なることになります。
1票の格差についてもっと詳しく知りたい人は、以下の記事でよりわかりやすく詳細に解説しているのでぜひ参考にしてみてください!
違憲状態とは
違憲状態とは、端的に言えば、憲法に違反していると言える状態だから早く修正しなさいという判決です。
1票の格差を是正する為に必要な合理的期間のうちに是正をしなければ、違憲状態から違憲に変化することになります。憲法違反のイエローカードというわけですね。
それでは詳しく説明していきましょう。
前述の通り、憲法上では1票の価値は平等でないといけないと規定されています。しかし、有権者人口は転居や出産・死亡などで変化することから、全く同じにすることは困難です。
そのため、1票の格差が生じることは前提で、どれだけ抑えるかという話になります。
その1票の格差があまりに大きいと、憲法で定められた平等選挙の原則に反するから、選挙結果は向こうではないか?となるわけです。
有権者人口は選挙が始まるその時まで変化するわけですから、事後的に「あの選挙は合憲か?違憲か?」と裁判で検証する流れになります。そして、「憲法違反な状態だから、すぐに是正しなさい」という判決につながるという経緯です。
違憲状態を是正する合理的期間とは
違憲状態について理解すると、続いて違憲状態を是正する合理的期間とはどれくらいなのか、という疑問が出てきますよね。
実は、合理的期間というのは何年何か月というように明確に規定がされているわけではありません。
1票の格差問題の場合、選挙区の再編などが是正する方法になります。そのため、選挙区を再編するための法整備や行政手続きなどにどれくらい時間が必要か、客観的に判断されることとなります。
参考となる過去事例としては、2014年の衆院選での1票の格差訴訟での裁判があります。2015年11月25日に最高裁で判決が出たこの裁判で、最高裁の大橋正春裁判官は「前回の違憲状態判決から今回の裁判まで3年8か月が経過しており、選挙区再編に必要な合理的期間は経過しているのではないか」という旨を述べています。
結果として、2015年のこの裁判では、大橋裁判官を含む3人の裁判官の反対があった中で違憲ではないという判決が出ました。
日本弁護士連合会も大橋裁判官らと同じ旨の主張をしており、この4年弱、つまりは衆院選から次回衆院選までという期間が、是正のための合理的間に足るかというのが注目すべき点とも考えられますね。
広島に注目?2022年の参院選の1票の格差裁判
続いて、直近の時事ネタとして2022年の参院選についての裁判の流れを見ていきましょう。
この選挙については、2つの弁護士グループが全国の高等裁判所やその支部に合計16の訴訟を行いました。現在出ている判決は以下の通りです。
違憲:1件 |
仙台 |
違憲状態:8件 |
札幌、東京、金沢、大阪、広島、福岡、宮崎、秋田 |
合憲:7件 |
広島、岡山、名古屋、松江、高松、那覇、東京 |
11月15日の仙台高裁秋田支部による違憲状態判決をもって、高等裁判所とその支部での判決が出そろいました。
なお、広島については、2つの弁護士グループが訴訟を起こしており、1つめの判決が違憲状態、2つ目の判決が合憲とのことでした。
その後、2023年10月18日には最高裁判所が合憲との判決を出しています。
もしかしたら、これを機に広島の参議院選挙区の区割りや定数が変化するかもしれませんね。現在の選挙区割りについては、以下の記事で解説しているので気になる人はぜひ読んでみてください!
1票の格差問題は最高裁で違憲となったことは無い
さて、1票の格差問題の違憲状態判決について見てきましたが、そもそも違憲の判決が出たことがあるのかという疑問を持った人がいるかもしれませんね。
実は、最高裁で1票の格差問題が違憲となったことはありません。
参院選の1票の格差について、はじめて違憲状態とされたのが、1992年の参院選についての裁判で1996年に最高裁の判決が出ています。この時の1票の格差は最大で6.59倍でした。
その後は、1票の格差が最大5.00倍だった2010年の参院選についての裁判で、2012年に最高裁の違憲状態判決が出るまで、5倍程度であれば合憲とする流れがあったのです。
ちなみに、現在は目安として2倍を超えてくると違憲ではないかという見方がされています。
違憲状態の是正で、広島も選挙区が変わるかも?
この記事では違憲状態とはどういう判決なのかを解説してきました。1票の格差訴訟と密接にかかわる内容だということが伝われば幸いです。
2022年の参院選では、最高裁の判決こそ合憲でしたが、広島選挙区は違憲状態と合憲という2つの高裁判決が出ており、1票の格差是正の方向に進む可能性もあります。現在は広島県全体が1つの選挙区で定数は2となっており、是正する場合どのような方針になるのかは注目ですね。
もしも他にも何か知りたいことがあればぜひコメントをSNSやコンタクトフォームからお寄せください!
よくある質問
違憲状態と違憲の違いは?
例えるなら、違憲はレッドカード、違憲状態はイエローカードとなります。
違憲が憲法違反と確定させる判決であるのに対し、違憲状態は憲法違反になるから合理的期間内に是正しなさいという判決です。
違憲状態で、是正するのに必要な合理的期間内に是正が行われない場合は違憲となります。
違憲状態の合理的期間とは?
違憲状態を是正する合理的期間については、明確に数字での規定はありません。
1票の格差問題では、選挙区再編などの是正策を実行するのに客観的に見て必要な期間ということになります。
2015年には最高裁の裁判官が、衆院選の1票の格差問題について、前回の違憲状態判決から3年8か月が経っており、これは合理的期間が経過しているのではないかという旨の発言もしています。
2022年の参議院選挙の判決は?
高等裁判所とその支部に2つの弁護士グループから16の訴訟が行われています。
2022年11月15日に16件の判決が出そろっており、違憲が1件、違憲状態が8件、合憲が7件となっています。これらを受けて、2023年10月18日には最高裁判所が合憲との判決を出しています。