アダムズ方式での計算により、2024年10月27日に投開票が行われる衆院選から、いわゆる10増10減と呼ばれる選挙区再編が適応されることが決まりましたね。
広島でも、小選挙区が1つ減るほか、比例中国ブロックも1議席減ることになっています。
しかし、実際アダムズ方式ってどんな計算方法なのか、わからない人も多いのでは?そんなあなたにメリットやデメリット、計算例までわかりやすく解説します。
目次
アダムズ方式とは選挙区の決め方の1つ
アダムズ方式とは、2022年の選挙区再編で用いられた小選挙区割りの計算方法です。ざっくり説明すると、人口に応じて小選挙区を各都道府県に分配するという内容になります。
小選挙区制についておさらいしたい!という人は、以下の記事をご覧ください。
小選挙区制とは?小選挙区比例代表並立制や広島の選挙区割も解説
アダムズ方式という名称は、アメリカ第6代大統領のジョン・アダムズが提唱したことから名づけられました。
アダムズ方式の計算方法と計算例
アダムズ方式とは実際にどのような計算方法なのか、計算例とともに見ていきましょう。
アダムズ方式の計算方法
アダムズ方式の計算式は以下の通りです。
厳密には計算結果の小数点以下を切り上げたものが、各都道府県の小選挙区の数です。小選挙区は定数が1議席なので、各都道府県の選挙区数はそのまま各都道府県の議席数となりますね。
なお、この定数Xは、各都道府県の計算結果の合計が総議席数になるように設定します。定数Xを決める手順は、日本の総人口÷総議席数を仮にXとして計算し、その結果に応じてXの値を調整するという流れです。
アダムズ方式の計算例
実際の計算例を見ると、より理解しやすくなるかもしれませんね。
総人口900万人(A県500万人、B県300万人、C県100万人)かつ総議席数50の場合で計算してみましょう。
このとき、定数Xの候補は900万÷50=18万となります。
この定数XでA~C県の人口を割った結果が以下になります。
- A県:500万÷18万=27.77777778≒28
- B県:300万÷18万=16.66666667≒17
- C県:100万÷18万=5.5555555≒6
このとき、各県の合計が28+17+6=51となり、総議席数50を超えてしまいます。
それでは、定数Xを19万にして計算してみましょう。
- A県:500万÷19万=26.31578947≒27
- B県:300万÷19万=15.78947368≒16
- C県:100万÷19万=5.263157895≒6
今度は各県の合計が27+16+6=49となり、総議席50に足りませんね。定数Xは18万から19万の間で適正になりそうです。
続いて、定数Xを18.6万にして計算してみましょう。
- A県:500万÷18.6万=26.88172043≒27
- B県:300万÷18.6万=16.12903226≒17
- C県:100万÷18.6万=5.376344086≒6
この場合は、各県の合計が27+17+6=50となり、総議席数50と同じになりました。
この計算結果から、以下のように小選挙区の数を3県に割り振るというのがアダムズ方式になります。
- A県:27選挙区
- B県:17選挙区
- C県:6選挙区
この計算を47都道府県で行った結果が今回の選挙区再編に適用されたというわけですね。
アダムズ方式のメリットは?
さて、アダムズ方式がどういう計算方法なのかわかったところで、続いてはなぜアダムズ方式を導入するのか、そのメリットを以下の2点に分けて説明していきます。
- 1票の格差是正につながる
- 各都道府県に1つ以上の選挙区が確保できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1票の格差是正につながる
アダムズ方式の1つ目の利点は、1票の格差の是正につながるということです。
1票の格差とは、1議席当たりの有権者数が選挙区によって異なる状態を指します。当選するために必要な票数が少ないほど、1票の価値が重くなるというわけですね。1票の格差についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事でわかりやすく解説しているのでぜひ参考にしてみてください!
計算方法からわかる通り、アダムズ方式は各都道府県の人口に応じて小選挙区、つまりは議席を分配します。言い換えれば、各選挙区の人口が可能な限り等しくなるように小選挙区を割り振っているわけです。
そのため、1票の格差を是正するためにはアダムズ方式が有効な方法であるといえます。
各都道府県に1つ以上の選挙区が確保できる
アダムズ方式の2つ目の利点は、各都道府県に1つ以上の選挙区が確保できるという点です。
アダムズ方式の特徴として、計算結果の小数点を切り上げるという点があります。そのため、計算結果は必ず1以上になります。
人口に応じて割り振るとはいえ、人口が少ないから1議席もないという地域があると、その地域が政治から取り残されてしまうため、この点はメリットと言えますね。
アダムズ方式にも問題点が?デメリットが1つ
アダムズ方式にはメリットがあると同時にデメリットも存在します。それは、選挙区数、つまり議席数の地域格差が生じるという点です。
アダムズ方式では人口に応じて選挙区を分配するため、地域間の人口格差が議席数の格差に直結します。
総務省統計局によれば、10増10減と呼ばれる選挙区再編の基準となった2020年10月時点で最多の東京都(14,047,594人)と最少の鳥取県(553,407人)で人口はおよそ25倍にもなるため、単純計算で東京は鳥取の25倍の議席数を持つことになる訳です。
実際には以下の点も考慮されているため、単純計算のまま25倍ではなく、東京が新選挙区割りで30議席、鳥取が2議席となっています。
- 1票の格差を2倍未満に収める
- なるべく自治体区分をまたがない
このように衆議院の議席が人口の多い都市部に偏ることで、地方各地の声が政治に反映されなくなるのではないかとも危惧されています。
アダムズ方式はいつから導入?2022年から広島にも
アダムズ方式の内容が分かってきたところで、実際に生活に影響するのはいつからなのかという点も気になりますよね。
結論から言うと、2024年10月27日に投開票が行われる衆院選から導入されます。
なお、この2022年の選挙区再編については、2016年の公職選挙法改正でアダムズ方式が導入されたのち、2021年に発表された2020年の人口をもとに計算されています。
小選挙区が10区減り、新たに10区できることから10増10減とも呼ばれますね。比例ブロックの議席数は、3ブロックで1議席減少、3ブロックで1議席増加するため3増3減と言えます。
広島については、現在の広島4区(東広島市・安芸郡など)が分割されて他の選挙区に統合される形で1区減少という変化です。また、比例代表の中国ブロックでも1議席減少となります。
広島の新たな小選挙区への変化については、以下の記事で解説しているので興味がある人はぜひ読んでみてください!
アダムズ方式とドント方式の違いは?
アダムズ方式とよく混同される計算方法にドント方式というものがあります。
このドント方式は、日本では主に比例代表制において各政党への議席分配に使われる計算方法です。選挙区割りではなく、開票の際に集計で使う計算式だと覚えておきましょう。
ドント方式については、こちらの記事で例題とともにわかりやすく解説しているので、ぜひ合わせて読んでみてください。
ドント式とは?簡単な計算方法やメリット・デメリットもわかりやすく解説
アダムズ方式は1票の格差是正のための諸刃の剣
アダムズ方式の用途や計算方法、特徴について解説してきました。
1票の格差を是正する上では、選挙区割りの計算方法としてアダムズ方式は有用です。しかし、人口の少ない地域が政治に取り残されるという危険性も持ち合わせています。
1票の格差問題は、都市部と地方での人口問題にも密接にかかわる内容です。これを機に、人口問題などの社会問題に目を向けるきっかけになるかもしれませんね!
もしも他にも何か知りたいことがあればぜひコメントをSNSやコンタクトフォームからお寄せください!
よくある質問
アダムズ方式とはどんな計算方法?
アダムズ方式は、特定の定数Xで各都道府県の人口を割り、その結果を各都道府県の小選挙区数とする計算方法です。
計算結果が総議席数と等しくなるように定数Xを定義して計算します。
アダムズ方式のメリットとデメリットは?
アダムズ方式のメリットは2点あります。
1点目は人口に応じて議席を分配するため1票の格差を是正できるという点、2点目は計算結果の小数点以下を切り上げるため各都道府県に最低1議席は確保されるという点です。
アダムズ方式とドント方式の違いは?
計算方法はもちろん、使用される場面が違います。
日本では、アダムズ方式は2016年以降に小選挙区の分配で使用され、ドント方式は比例代表の開票時に各政党の議席数の集計に使用されます。
更新情報
- アダムズ方式のデメリットについての記載を、より明確かつ一意の表現に訂正しました。
- 10月4日に、2024年の衆議院議員選挙日程を踏まえて、アダムズ方式の反映されるタイミングを具体的な日程に訂正しました。