コスタリカ方式とは、衆議院議員選挙における立候補方式の1つです。同じ選挙区に同じ政党の候補者が複数人いる場合に、一方を小選挙区、もう一方を比例代表の名簿上位で擁立し、選挙ごとに入れ替えを行う手法を指します。
選挙区の再編が相次ぎ、報道でもコスタリカ方式という言葉を耳にする機会が増えてきましたね。しかし、コスタリカ方式とはどんな手法なのか、そもそもなぜおこなわれるのか、良くわからない人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、コスタリカ方式とはなにか、メリットデメリットや実際に広島でも採用される可能性についてわかりやすく説明します!
目次
コスタリカ方式とは
コスタリカ方式とは、衆議院議員選挙で1つの選挙区に同じ政党の候補者が2人いる場合に、一方の候補者が小選挙区に、もう一方の候補者が比例代表に立候補し、選挙が行われるたびに小選挙区と比例代表を交代して立候補することをいいます。
コスタリカ方式のメリット・デメリット
コスタリカ方式にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。立候補者の目線と政党の目線の両方を考えつつ解説します。
コスタリカ方式のメリット
コスタリカ方式のメリットとして、候補者目線でのメリットは以下の2点が挙げられます。
- 次回の選挙で比例上位が約束される
- 支持母体などを候補者間で共有できる
まず、コスタリカ方式では小選挙区で立候補した次の選挙では比例代表に立候補するのですが、ここで名簿上位への登録がほとんどの場合約束されます。これは、比例代表に立候補した際に名簿順位が低いと、落選の恐れがあるため候補者側に利点がないためです。
衆院選の比例代表制は拘束名簿式なので、各政党の比例代表は名簿の順番に当選します。このため、特に大政党などでは比例名簿の上位に登録された場合は当選する確率が高くなるというわけです。
比例代表の拘束名簿式についてよくわからないという人は、以下の記事でわかりやすく解説しているのでぜひ読んでみてください。
比例代表制と選挙区制の違いをわかりやすく解説
加えて、コスタリカ方式では2人の候補者が小選挙区と比例代表に交代で立候補する性質上、お互いの支持母体を共有できるというメリットもあります。お互いに対立候補ではない以上、次回の選挙での協力を前提として協力できるというわけです。
候補者だけでなく、支持者としても自分が支持する候補者を小選挙区で立候補する際に応援してもらうために、もう一方の候補者にも投票しやすくなります。
また、政党側の目線では候補者調整を進めやすいというメリットがあります。複数の立候補予定者のうち、どちらか一方だけを候補者とするのではなく、それぞれ交代で立候補できるというのは候補者決めの折衷案として使いやすいのです。
コスタリカ方式のデメリット
コスタリカ方式について、候補者目線と政党目線双方からのデメリットとして挙げられるのが、比例上位の候補者が増加するという点です。
メリットで説明した通り、コスタリカ方式では候補者を比例名簿の上位に記載します。これは、他の候補者から見れば比例名簿で下位に回されることになりますよね。
当然、比例上位の候補者が増えるほど、他の比例代表の候補者は当選しにくくなります。そのため、他の候補者にとっては不利益であり、政党側にも他の候補者から反発が起きるリスクがあると言えます。
また、候補者側のデメリットとして、地盤が不安定になりうるという点が挙げられます。
メリットで触れた通り、コスタリカ方式では候補者同士の支持母体を共有することが可能です。見方を変えれば自身の支持母体がもう一方の候補者に傾く可能性があると言えます
コスタリカ方式で交代していた候補者が離党したり、政党が分裂したりした際に支持母体が失われ、地盤が不安定になるというリスクも存在するのです。
コスタリカ方式は広島でも採用されるかも
実は、コスタリカ方式は広島でも採用されるのではないかと言われています。
というのも、いわゆる10増10減と言われる選挙区再編により2024年の衆議院選挙から、広島で小選挙区が1つ減っているからです。
この広島の選挙区再編については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
広島の選挙区割りが2024年の衆院選から変更!10増10減の小選挙区再編と比例代表も
この再編により、自民党に所属する旧広島4区選出の新谷正義氏と、旧広島5区選出の寺田稔氏の地盤が同じ新広島4区となりました。
2024年10月に行われた衆議院議員選挙では、新谷正義氏は比例代表中国ブロックで、寺田稔氏は新広島4区で自民党公認で立候補しており、新谷正義氏は比例中国ブロックで当選、寺田稔氏も小選挙区では落選し比例復活での当選となっています。。
現段階では、コスタリカ方式の採用については自民党は明言していません。もしかしたら、今後の選挙では新谷正義氏と寺田稔氏が小選挙区と比例代表に交代で立候補することもあるかもしれませんね。
コスタリカ方式の実例
実際にコスタリカ方式について現在どのように扱われているのか、実例などをいくつか見ていきましょう。
- 現在コスタリカ方式が唯一採用されている青森1区
- 立憲民主党県連がコスタリカ方式を申請した新福島2区
まず、現在コスタリカ方式が採用されている選挙区は、青森1区のみとなっています。青森県では2017年に小選挙区が4から3に減っており、分割された旧2区選出だった江渡聡徳氏と旧1区選出だった津島淳氏でコスタリカ方式での選挙をおこなっています。
過去には山梨1区や徳島1区など複数の選挙区で自民党によってコスタリカ方式が採用されていましたが、候補者の死去などの理由から現在では青森1区以外では採用されていません。
他にも、10増10減に伴い2023年以降の選挙で選挙区が1減った福島県では、立憲民主党福島県連から立憲民主党本部に対して、新福島2区でのコスタリカ方式が申請されています。
結果として、新福島2区の公認候補予定者には旧福島3区選出の玄葉光一郎氏が選任され、旧福島2区選出の馬場雄基氏は比例代表東北ブロックの単独1位に決定されました。
立憲民主党は、コスタリカ方式の採用については明言しておらず、候補者調整の結果でありそれ以上でもそれ以下でもないと発表しています。
コスタリカ方式の始まり
コスタリカ方式が始まったのは1994年です。この年は、衆議院議員選挙が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変わった年でもあります。
衆議院議員選挙が小選挙区比例代表制に変わったことで、自民党の複数の候補者が同じ選挙区に重複してしまう事例が複数件発生しました。これを受けて、当時は自民党幹事長だった森喜朗元総理大臣が発案したのが最初とされています。
なお、コスタリカ方式という名前は、コスタリカの選挙方式に似ていることが由来となっています。
コスタリカでは、有権者と議員の癒着を防ぐ目的で、同じ選挙区での連続当選が禁止されています。選挙区に立候補する候補者が毎年変わるというところから名づけられており、厳密には異なる制度というのが面白いですね。
選挙ごとに投票先が変わるかも?コスタリカ方式に注目!
もしかしたら広島でも採用されるかもしれないコスタリカ方式。あなたも選挙毎に別人の中から候補者を選ぶことになるかもしれませんね。
なぜそのような立候補の仕方をするのか、これを機にぜひ理解を深めてみてください。
よくある質問
コスタリカ方式とは?
コスタリカ方式とは、衆議院議員選挙における立候補方式の1つ。
同じ選挙区に同じ政党の候補者が複数人いる場合、一方を小選挙区、もう一方を比例代表の名簿上位で擁立し、選挙ごとに入れ替えを行う手法です。
コスタリカ方式のメリットは?
コスタリカ方式のメリットは、候補者目線では1回おきに選挙で比例名簿の上位で立候補できる点と、2人の候補者で支持母体を共有し得票数を伸ばしうるという点です。
政党目線では、折衷案として提示することで候補者調整を円滑に行えるという点があります。
コスタリカ方式のデメリットは?
コスタリカ方式のデメリットとして、比例上位が固定されるために他の比例代表の候補者から反発が起きる可能性が挙げられます。
また、政党の分裂や候補者の離党などによって、候補者の地盤が吸収されて不安定になる恐れも考えられます。
更新情報
2024年12月13日に、選挙区割りが変更されてから最初の衆議院議員選挙が行われたことを受けて、現在の広島でのコスタリカ方式採用に関する記述を修正しました。